農業をなさっているお客様が、
先日、収穫したてのつやつやの「林檎」と共に送ってくださったお手紙を
ご紹介します。
「腹八分目農業宣言!」
家内がリンゴ園内で一本の木に鳥の巣を見つけたのは初夏の頃でした。
人類が農耕を始めておおよそ1万年。そのうち近代農業は(化学肥料や農薬を使用した
生産性至上主義のやり方だと取ってください)100年ほどらしいですが
そろそろほころびがあちこちで出てきたようです。
宮崎での牛の口蹄疫病、アメリカでの卵の大量廃棄。
生産性を第一として生き物たちを狭い空間に押し入れ
無理矢理産ませ、又早く大きく仕上げる。野菜も同様です。
農家は生命の維持に必要な「食」にたずさわるという心を忘れ
「畑」は「工場」に変わってゆきます。
ストレスを感じながら育った生き物や野菜、くだものは本当の力を
持っているのでしょうか?
人を良くすると書いて「食」になりますが、それらを体の中に
取り入れた時に人間はほんとうに健全になれるのでしょうか。
私達のリンゴは無農薬ではありません。その中の木に鳥が巣をつくってくれたのは
ここ数年ばくぜんと考えてきた今の農業に対する疑問へのなんらかの
メッセージなのだ、と受けとりました。
腹八分目農業とは「もっと」から「ほどほど」への価値の転換です。
自分たちの取り分を80%。残りの20%を虫をも含む自然の分と思えば
もっとおおらかで伸び伸びとした作物が出来るはずです。
今年、私たちのリンゴ園はいくつかの進歩がありました。
2m間隔のリンゴの木をほとんど間引いたことがひとつ。
十数年つきあってきた木を切ってしまうのは思い切りのいることでしたが
今収穫を迎え正解だったと実感します。
どの枝ものびのびとして、どの実も光と風の恩恵を受けうれしそうです。
そして巣を見つけたことをきっかけに園に農業機械を入れることを止めにしました。
(最重量2tあります)
できる限り土をやわらかくして根ものびのびと成長できる環境にしたいから
です。
試行錯誤はあるでしょうが自分がリンゴの身になって考えたことを
ひとつひとつ実行してゆけばその先に光があるはずです。
「50年に一度の異常気象」
今年は花豆が全く実をつけませんでした。
75才の母にたずねても生まれて初めてとのことです。
農家にとっては一生にたった一度であってほしい天候不順の
年でした。
四月下旬の降雪、開花期の大霜、大雨、夏の高温、
いちばん大変だった夏ひと月近くつづいた干ばつ。
そして秋の高温・・・・自然相手の農業で人のやれることは
限られていることを教えられた1年です。
平22.10.25